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Channel: スポーツナビ+ タグ:篠塚和典
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【読売天才遊戯】23歳の日本代表3番打者!スペシャル・ワン坂本勇人が「天才・長嶋茂雄から継承した驚異の打撃術」とは?

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偽装のみが銃から身を守る。現在公開中の映画「アルゴ」(ベン・アフレック監督作品)。イラン革命の最中に発生したテヘランの米大使館人質事件のカオスをスリリングに描いた傑作だ。 1979年のニュース映像を忠実に再現した暴動映像が「これは実話だ」と観客のハートを抉る。 52人が人質となり、自力で脱出した6人のアメリカ人がカナダ大使の自宅に潜伏。過激派に見つかったら殺られる・・・。家から一歩も出れない緊迫した状況に彼らの精神は疲弊していく。 CIAで人質救出を専門とするトニー・メンデスは、6人を安全に国外へ脱出させるためにある作戦を決行。「アルゴ」と名付けた実在しないSF映画を企画し、人質を撮影スタッフに偽装して出国させようとしたのだ。果たして、彼らは無事に飛行機に乗れるのか・・・というストーリーだが、後半30分の怒涛の緊張感は凄まじい。今回はアメリカ側から描いた映画だが、イラン側の視点ではまったく異なる内容になるだろう。国が違えば正義の基準もまったく違う。正義というのは常に曖昧なものだ。映画の舞台となった79年と言えば、日本では江川卓の「空白の1日」事件に揺れていた頃である。西武ライオンズ創設元年で西武球場完成。西武グループのおいしい生活が到来し、巷ではYMOの「テクノポリス」が大ヒット。世界最強タッグリーグ戦ではドリー・ファンク・ジュニア&テリー・ファンク組「ザ・ファンクス」が優勝した。芸能界に目を向けると、川島なおみが「隣のお姉さん」的な女子大生アイドルとしてデビュー。 80年代初頭の女子大生ブームの火付け役となった。なんていうのか、なんとなく平和だ。広島と近鉄の日本シリーズは、あの「江夏の21球」で広島が日本一に輝き、巨人ではすでに伝説化した「地獄の伊東キャンプ」が長嶋監督の元で決行されていた。江川、西本、中畑、篠塚ら若手選手18人を選抜し、静岡県・伊東市で1カ月に渡り行われた秋季キャンプ。っていうか、当時の球界には秋季キャンプという概念すらまだなかった。 43歳の若きミスターは、ここで科学的に見たらクレイジーとしか言いようがないトレーニングメニューを組む。バットを振り過ぎて、振り終えても指がバットから剥がれない。サーキット用に作られた起伏の激しい砂利道をぶっ倒れるまで走らせる。寝る前が怖かった。目をつぶったら朝が来てしまうから。怪物・江川をしてそう回想するくらいの猛烈な特訓の日々。選手達は毎朝「カーン、カーン」という奇妙な音で目覚める。宿の窓から外を見ると、鳥カゴと呼ばれる打撃ゲージの中でひとりの男が汗だくでバットを振っていた。当時スイッチヒッターに挑戦中の松本匡史である。傍らにはミスターの姿。時計を見たら朝6時。あいつらいったいいつからバットを振っていたんだ?松本の手袋は既に破れ、手の平の皮も擦り切れ、流れ出る血とバットのグリップが固まって激痛が襲う。中畑清はそれを見て嫉妬に燃えたという。「長嶋さんをひとりじめしやがって!」いや、そういうことじゃないだろうと突っ込む間もなく、 25歳の中畑は長嶋とのマンツーマンノックを繰り返す。 1000本、1500本・・・。受ける方も打つ方も狂ってる。昼食、大好きなカレーライスを目の前に、中畑は一口も口にすることができず水だけをがぶ飲みした。もう帰りたい、帰らせてくれ。逃げ出す寸前だった中畑だが、ある日過酷なランニング中にふと気付く。あれっ、俺の太股、こんなに筋肉付いてたっけ。中畑清、ブレークスルーの瞬間である。このキャンプの様子は「地獄の伊東キャンプ一九七九年の伝道師たち」(鈴木利宗著)に詳しい。今月発売された新刊だが、べらぼうに面白い。私も発売直後に購入して一気に読んだ。ひとりひとりに丹念にインタビューを重ねたルポタージュ構成だが、印象的だったのは当時22歳の篠塚利夫(現・和典)の章である。篠塚はキャンプ最終日に地獄のサーキットを走り切った直後、長嶋に向かってこう絶叫する。「ヘイ、ミスター!一緒に走れよ!」ここで長嶋は「よーしやってやる」と猛烈なダッシュをかます。ミスターの背中を笑顔で見送る選手達。数分後、坂の向こうから青白い顔をした長嶋茂雄がフラフラになりながら戻って来る。篠塚や中畑は苦悶の表情を浮かべつつ本当に走って見せた長嶋の姿に、「この人に一生ついていこう」と心に誓ったという。篠塚は伊東キャンプの印象的な練習として長嶋流のティーバッティングを上げている。通常の真ん中の球ではなく、高め、低めの明らかなボール球が放られて、それを足腰の上下運動を駆使してミートするという異質なティーバッティング。ミスターは言う。「これができれば、真ん中の球を打つ技術なんて朝飯前なんだよ」と。高めの球は腕を振りおろし、低めには足腰を瞬時にスクワットのように膝を曲げた状態に下げる。スイングと同時に最良の筋力トレーニングを行っているようなものだ。ウェイトトレーニングの強筋ではなく、野球の技術を高めながら、柔軟な筋肉を作っていく。篠塚は自身が巨人のコーチになってからも、この練習法を積極的に取り入れる。だが、ティーをやらせても、今の若い選手達は、やはり真ん中の球を打ちたがる現実。あのスペシャル・ワンも最初は「なんで?」という顔をした。それでも、根気よく説明すると、彼は篠塚が見ていないところでも、ティーで高め低めの球を放らせて、うまくミートする工夫を重ねていたという。坂本勇人が坂本勇人である理由。外角低めのボール球を体を泳がせながら手首を返して引っ張ってホームラン。野村克也は、その打法を「セオリーでは到底考えられない」と発言したが、篠塚からしてみれば「俺がミスターから教わって、彼らに教えたことを、勇人が努力してモノにした結果」だと称える。「あれはあのコの練習で身につけた技術にほかならない。高め、低め、あるいは内外角と勇人は相手バッテリーに弱点をつくらせない。すると相手バッテリーも投げる球がなくなってくる。それがバッティングの幅を広げる練習の意味なんです」本日16日、侍ジャパンマッチ2012日本代表対キューバ代表がヤフードームで行われる。坂本は「3番ショート」でスタメン出場予定。はっきり言ってこれは事件だ。 18歳でドラフト1位指名の巨人軍入団後、 19歳でショートのレギュラーを掴み、20歳で3割を打ち、21歳で30本以上のホームランを放った。 23歳で迎えた今シーズンは巨人のクリーンナップを張り、セ・リーグ最多安打のタイトル獲得。これマジ?ごめん、マジだ。まるでマンガの世界。まさにコミック・ジェネレーション。そして、気が付けば日本代表の「3番ショート」。天才なんてレベルじゃなく、球史に残るスペシャル・ワンだろう。先日の日本シリーズ第6戦、最後の打者・日ハム・糸井の打球が三遊間の坂本の前に跳ねた瞬間、多くの巨人ファンは「よしっ!」と思ったはずだ。これが1年前なら「やべぇ!」だっただろう。 2年前、「プロ野球死亡遊戯」では「坂本はメジャーで通用するショートになれる才能だ」とぶっこみ、当然「何、妄想書いてんだ」「絶対無理」とコメント欄は荒れた。いまやそんな当たり前のことを語るのは野暮だろう。 WBCでメジャースカウト陣はスペシャル・ワンの才能に驚愕するはずだ。坂本勇人は、巨人軍の、そして日本プロ野球界の未来そのものである。俺たちは長嶋茂雄の現役時代を知らない。だが、坂本勇人という才能の誕生と成長の過程をリアルタイムで体験できている。それは本当にラッキーなことだと心から思う。 See you baseball freak・・・

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